「専業主婦の私は、将来年金をいくらもらえるのだろう」と不安に感じる人もいるでしょう。
専業主婦が受け取る年金額は、加入歴によって異なります。20歳から60歳までの40年間が保険料納付済期間として扱われる場合、2026年8月時点の老齢基礎年金は満額の月70,608円とされています。厚生年金の加入歴があれば、その分も上乗せされます。
なお、専業主婦だけを対象とした平均年金額は公表されていないため、自分の加入記録から確認することが大切です。
本記事では、まず2026年8月時点の老齢基礎年金の満額と加入歴別の受給額を示したうえで、離婚・死別時の年金変化、制度改正、受給額を増やす方法を解説します。自分の加入記録から将来の受給額を確認する手順も紹介します。
この記事の内容をまとめると
- 2026年度の老齢基礎年金の満額は月70,608円
- 「専業主婦限定の平均年金額」は公表されていない
- 独身時代などに厚生年金へ加入していれば老齢厚生年金が上乗せされる
- 離婚時は3号分割、死別時は要件を満たせば遺族厚生年金などの対象になる
- 短時間労働者の月額8.8万円以上という賃金要件は2026年10月に撤廃予定
- 2025年の年金制度改正法に第3号被保険者制度の廃止は盛り込まれておらず、2026年8月時点では制度が続いている
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・保険商品の推奨・勧誘を目的とするものではありません。年金額・制度内容は2026年8月時点の情報に基づいています。実際の受給額は加入記録や生年月日などによって異なるため、正確な金額はねんきんネットや年金事務所でご確認ください。
この記事の内容
専業主婦(第3号被保険者)がもらえる年金はいくら?

ここでは、専業主婦と第3号被保険者の違いを確認したうえで、2026年度の老齢基礎年金額を解説します。
専業主婦と第3号被保険者は同じ意味ではない
「専業主婦」が働き方や生活状況を表す一般的な呼び方であるのに対し、「第3号被保険者」は国民年金上の区分を指します。

第3号被保険者となるのは、原則として次のような人です。
- 厚生年金に加入する第2号被保険者に扶養されている配偶者
- 20歳以上60歳未満
- 原則として年収130万円未満
- 原則として扶養する配偶者の年収の2分の1未満
ただし、自分自身が勤務先で厚生年金の加入要件を満たすと、第3号被保険者ではなく第2号被保険者に変わります。
また、夫が自営業者やフリーランスで第1号被保険者の場合、妻は専業主婦であっても第3号被保険者にはなれません。この場合、妻自身も第1号被保険者として国民年金保険料を納めることになります。
第3号被保険者の期間は保険料納付済期間として扱われる
第3号被保険者は、自分で国民年金保険料を納める必要がありません。該当している期間は保険料納付済期間として扱われ、将来の老齢基礎年金額にそのまま反映されます。
保険料の負担についても、夫が妻の分まで個別に払っているわけではなく、第2号被保険者が加入する厚生年金制度全体で負担する仕組みです。
したがって、正しく第3号被保険者になっている期間について「専業主婦だから老齢基礎年金が減る」ということはありません。
一方で、厚生年金の報酬比例部分は自分自身が厚生年金に加入した期間に応じて決まるため、第3号被保険者の期間だけでは老齢厚生年金は増えない点に注意しましょう。
2026年8月時点(令和8年度)の老齢基礎年金の満額は月70,608円
2026年度の老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以降生まれで月70,608円・年847,300円、昭和31年4月1日以前生まれで月70,408円です。
満額を受け取るには、20歳から60歳までの40年間にあたる480月が、保険料納付済期間などとして年金額に反映されなければなりません。
第3号被保険者期間も納付済期間に含まれるため、20歳から60歳まで未納がなく適切に加入し続けていれば、老齢基礎年金を満額受給できる可能性があります。
「専業主婦だけの平均年金額」は公表されていない
厚生労働省の統計では、専業主婦だけを抽出した平均年金額は公表されていません。国民年金の女性受給権者の平均老齢年金月額は57,582円ですが、厚生年金の受給権を持つ女性も含まれるため「専業主婦の平均」とは捉えられません。
また、「基礎のみ・旧国年」の女性は月55,206円、「基礎のみ共済なし」は月53,746円ですが、こちらも専業主婦限定の数値ではありません。
さらに、現在の受給者には1986年4月の第3号被保険者制度開始以前の加入歴を持つ人もいます。そのため、現在の平均額を現役世代の将来額の目安としてそのまま使うのも適切ではありません。将来の年金額は、自分の加入記録と2026年度の年金額をもとに確認しましょう。
参考:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
【加入歴別】専業主婦の年金額早見表

専業主婦が受け取る年金額は、現在の働き方だけでなく20歳以降の加入記録によって決まります。ここでは、加入期間や独身時代の職歴別に目安を確認します。
ずっと専業主婦だった場合は加入期間別の老齢基礎年金額
結婚後ずっと専業主婦だった場合でも、第3号被保険者期間などを含めて40年間すべてが年金額に反映されれば、老齢基礎年金は満額です。
2026年8月時点の満額をもとに単純計算すると、納付済期間別の目安は次のようになります。
保険料納付済期間別の老齢基礎年金額(2026年8月時点の額で編集部試算・概算)
| 年金額に反映される期間 | 年額の目安 | 月額の目安 |
| 40年(480月) | 約84万7,300円 | 約70,600円 |
| 35年(420月) | 約74万1,400円 | 約61,800円 |
| 30年(360月) | 約63万5,500円 | 約53,000円 |
| 25年(300月) | 約52万9,600円 | 約44,100円 |
※満額847,300円×年金額に反映される月数÷480月で計算した編集部による概算です。免除期間などがある場合は計算方法が異なります。
実際の年金額を左右するのは「専業主婦だった年数」ではなく、20歳から60歳までの加入状況です。まずは自分の記録を確認するところから始めましょう。
独身時代に厚生年金に加入していた場合は勤続年数・報酬に応じて上乗せされる
結婚前などに会社員として厚生年金へ加入していた期間があれば、原則として老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も受け取れます。
2003年4月以降の加入期間について、平均標準報酬額と加入期間を限定して単純計算した場合の目安は次のとおりです。
老齢厚生年金の報酬比例部分の上乗せ額(編集部試算)
| 平均標準報酬額 | 加入期間5年 | 加入期間10年 | 加入期間15年 |
| 20万円 | 年約6.6万円(月約5,500円) | 年約13.2万円(月約1.1万円) | 年約19.7万円(月約1.6万円) |
| 25万円 | 年約8.2万円(月約6,900円) | 年約16.4万円(月約1.4万円) | 年約24.7万円(月約2.1万円) |
| 30万円 | 年約9.9万円(月約8,200円) | 年約19.7万円(月約1.6万円) | 年約29.6万円(月約2.5万円) |
※2003年4月以降の期間について「平均標準報酬額×5.481÷1,000×加入月数」で単純計算した編集部試算です。実際の年金額には再評価率などが反映され、2003年3月以前の加入期間は計算式も異なります。
たとえば平均標準報酬額25万円で10年間加入していたなら、老齢厚生年金の報酬比例部分として月約1.4万円が上乗せされる計算です。
なお、冒頭で示した「月5,000円〜2.5万円程度」という範囲は、平均標準報酬額20万〜30万円・加入期間5〜15年・2003年4月以降という条件を置いた試算にすぎません。厚生年金の加入期間や報酬によっては、この範囲を下回ることも上回ることもあります。
未納・免除・納付猶予・学生納付特例は扱いが異なる
保険料を納めていなかった期間でも、区分によって年金額への影響は変わります。
未納は、保険料を納めず免除などの承認も受けていない状態で、その期間は原則として年金額に反映されません。一方、所得などの要件を満たして承認を受けた保険料免除であれば、2009年4月以降の全額免除期間は満額の2分の1として計算されます。
注意したいのが納付猶予・学生納付特例です。受給資格期間には数えられるものの、そのままでは年金額に増えません。
ただし、10年以内に追納すれば納付済期間として扱われます。学生納付特例の期間を「未納」と混同しているケースは少なくないため、ねんきんネットでそれぞれの期間がどの区分になっているかを見ておくと安心です。
【ケース別】夫の働き方・離婚・死別で変わる専業主婦の年金

ここでは、夫の働き方や離婚・死別によって年金の扱いがどのように変わるかを確認します。
夫が会社員・公務員の場合は一定の要件を満たせば加給年金・振替加算の対象になる
夫が厚生年金に加入しているなら、老後の収入は夫の老齢厚生年金+老齢基礎年金に妻の年金を合わせた、世帯単位で考えます。
厚生労働省が示す2026年度のモデル年金は、平均標準報酬45.5万円で40年間就業した夫と、その間ずっと専業主婦だった妻の組み合わせで夫婦合計月237,279円です。あくまで前提を置いたモデルであり、専業主婦世帯の平均受給額ではない点は押さえておきましょう。
これに加えて、厚生年金に20年以上加入した夫が65歳を迎えたとき、生計を維持する65歳未満の妻がいれば、夫の年金に加給年金が上乗せされます。ただし、妻自身に20年以上加入の老齢厚生年金の受給権があるときや、障害年金を受け取れるときは支給停止になります。
加給年金は妻が65歳になると原則終了し、バトンを引き継ぐように、今度は妻の老齢基礎年金に振替加算が加わります。対象は昭和41年4月1日以前生まれの人までで、それ以降の生まれの人にはありません。
夫が自営業・フリーランスの場合は専業主婦でも第1号被保険者になる
夫が自営業者やフリーランスで国民年金の第1号被保険者にあたる場合、専業主婦の妻も原則として第1号被保険者となります。
夫婦とも40年間すべて国民年金保険料を納め、2026年8月時点の満額を受け取るケースなら、夫婦合計で月141,216円(70,608円×2人)です。
一方で、第1号被保険者には第3号被保険者と異なり、自分で国民年金保険料を納める義務があります。2026年8月時点の国民年金保険料は月17,920円とされています。
なお、第1号被保険者であれば、条件に応じて付加年金や国民年金基金といった公的年金を上乗せする仕組みも利用できます。
離婚した場合は3号分割で厚生年金記録を分割できる
離婚した場合、2008年4月以降の第3号被保険者期間については3号分割を利用できます。

参考:日本年金機構「離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)」
3号分割は、第3号被保険者だった期間に対応する夫の厚生年金の標準報酬記録を2分の1ずつに分ける制度で、夫の合意は必要ありません。
ただし、分割の対象はあくまで厚生年金の記録です。夫が将来受け取る年金総額の半分を妻が受け取れる制度ではなく、老齢基礎年金そのものを夫婦で分ける仕組みでもありません。
2008年3月以前の婚姻期間について厚生年金記録を分割したいときは、原則として当事者間で按分割合を決める合意分割を利用します。
請求期限にも注意しましょう。2026年4月1日以降に離婚した場合などは、年金分割の請求期限が原則として離婚等をした日の翌日から5年以内です。2026年3月31日以前に離婚等をした場合は原則2年以内となります。
夫と死別した場合、遺族厚生年金は年齢や子どもの有無でも受給期間が変わる
厚生年金に加入していた夫が亡くなり要件を満たすと、妻は遺族厚生年金を受け取れる場合があります。基本額は、夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。
ただし、子どものいない30歳未満の妻は原則5年間の有期給付です。また、40歳以上65歳未満で一定の要件を満たす妻には、中高齢寡婦加算が加わる場合があります。2026年度の加算額は年635,500円です。
以下は、妻が40〜64歳・子どもなし・自身の老齢厚生年金なし、夫の平均標準報酬額40万円・厚生年金加入300月とした試算です。
夫と死別した場合の遺族厚生年金の試算例(編集部試算)
| 項目 | 金額の目安 |
| 夫の老齢厚生年金の報酬比例部分 | 年約65.8万円 |
| 遺族厚生年金(4分の3) | 年約49.3万円(月約4.1万円) |
| 中高齢寡婦加算 | 年63万5,500円(月約5.3万円) |
| 40〜64歳の合計 | 月約9.4万円 |
| 65歳以降(妻の老齢基礎年金が満額の場合) | 月約11.2万円 |
参考:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」/日本年金機構「報酬比例部分」
※夫の報酬比例部分は40万円×5.481÷1,000×300月で単純計算しています。65歳以降は、妻自身に老齢厚生年金がなく、老齢基礎年金を満額受給する前提です。実際の金額は夫婦それぞれの加入記録などによって異なります。
死別後に遺族年金だけで生活費をまかなえるか確認する
遺族厚生年金を受け取れるとしても、その金額だけで老後の生活設計ができるかは、個別の家計状況に応じて異なります。
夫の死亡後に必要となる生活費や住宅費、妻自身の収入などを含め、世帯全体で不足額を確認することが重要です。
| 確認項目 | 確認する内容 |
| 死別後の生活費 | 食費・光熱費・通信費など毎月の支出はいくら残るか |
| 住宅費 | 家賃・住宅ローン・固定資産税などの負担が続くか |
| 教育費 | 子どもの進学までに今後いくら必要か |
| 妻自身の収入 | 就労収入や将来の老齢年金をどの程度見込めるか |
| 貯蓄 | 生活費や教育費に使える預貯金がどの程度あるか |
| 遺族年金・死亡保障 | 公的な遺族年金や現在加入している死亡保障でいくら補えるか |
参考:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」/総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
必要な保障額を考えるときは、「遺族年金では不足が生じる」と一律に決めつけるのではなく、個別の家計状況から判断することが大切です。必要な支出から妻自身の収入・貯蓄・公的保障・すでに確保している死亡保障を差し引き、不足額があるかどうかを確認しましょう。
2025年成立の年金制度改正で専業主婦の年金はどう変わる?

2025年6月に成立した年金制度改正法では、社会保険の適用拡大や遺族厚生年金の見直しなどが盛り込まれました。ここでは、専業主婦や扶養内で働く人に関係の深い改正を確認します。
「106万円の壁」の賃金要件は2026年10月に撤廃予定
短時間労働者が厚生年金・健康保険に加入する要件の一つである月額賃金8.8万円以上という賃金要件、いわゆる「106万円の壁」に関係する要件は、2026年10月に撤廃される予定です。
これとは別に、勤務先の企業規模要件も段階的に縮小・撤廃されていきます。
| 時期 | 企業規模要件 |
| 2027年10月 | 36人以上 |
| 2029年10月 | 21人以上 |
| 2032年10月 | 11人以上 |
| 2035年10月 | 企業規模要件を撤廃 |
参考:厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト|従業員のみなさま」/厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方」
もっとも、賃金要件や企業規模要件がなくなった後も、短時間労働者には週の所定労働時間など別の加入要件が残る点は変わりません。
今後は、これまで扶養内で働いていた人でも厚生年金の加入対象となるケースが増えていくと考えられます。社会保険料の本人負担が発生する一方で、自分自身の老齢厚生年金が増える面もあるため、両方を踏まえて働き方を考える必要があるでしょう。
遺族厚生年金は2028年4月から段階的に見直される
2028年4月から、遺族厚生年金の男女差を解消するための見直しが始まる予定です。
現行制度では、子どものいない30歳未満の妻は原則5年間の有期給付ですが、改正後は子どものいない配偶者に対する5年間の有期給付の対象年齢が段階的に広がります。
とはいえ、すべての女性が2028年4月から5年で打ち切られるわけではありません。厚生労働省によると、主に次の人は今回の見直しによる影響を受けないとされています。
- すでに遺族厚生年金を受給している人
- 60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する人
- 2028年度に40歳以上になる女性
- 遺族基礎年金の対象となる子どもを養育している人
さらに、有期給付となる場合にも年金額を加算する措置が設けられるほか、障害がある場合や収入が十分でない場合などには継続給付の仕組みも用意されます。
したがって、死別時の年齢や子どもの有無だけでなく、受給権が発生する時期まで含めて確認することが大切です。
第3号被保険者制度は2026年8月時点で続いている
2025年に成立した年金制度改正法に、第3号被保険者制度そのものを廃止する内容は盛り込まれていません。
そのため2026年8月時点では、要件を満たす被扶養配偶者が第3号被保険者となり、自分で国民年金保険料を納めずに保険料納付済期間として扱われる仕組みが続いています。
その一方で、社会保険の適用拡大により、自分自身が厚生年金へ加入する人の範囲は今後広がっていきます。現在第3号被保険者でパートなどをしている人は、勤務時間や勤務先の規模など、自分が厚生年金の加入対象になる時期を確認しておきましょう。
専業主婦が公的年金を増やす方法と老後資金を補う方法

将来の生活に備える方法は、「公的年金そのものを増やす方法」と「公的年金以外の資産で老後資金を補う方法」に分けると整理しやすくなります。
60歳以降に国民年金へ任意加入する
60歳時点で老齢基礎年金を満額受け取れる480月に達していない場合は、一定の要件を満たせば60歳から65歳まで国民年金へ任意加入できます。2026年8月時点の国民年金保険料は月17,920円とされています。
2026年8月時点の満額を基準にすると、年金額に反映される期間を12カ月増やした場合、老齢基礎年金は年約2万1,200円増える計算になります。
ただし、任意加入には老齢基礎年金を繰上げ受給していないことなどの要件があります。未納や納付猶予期間などがある人は、まず加入記録の確認から始めましょう。
繰下げ受給で老齢年金を増やす
老齢基礎年金・老齢厚生年金は、原則65歳からの受給開始を66歳以降に遅らせる繰下げ受給を選択できます。
繰下げによる増額率は1カ月につき0.7%で、70歳まで繰り下げると42%、75歳まで繰り下げると最大84%の増額です。増額率はその後も変わりません。
一方で、繰下げている期間は対象となる老齢年金を受け取れません。受給開始までの生活費を確保できるか、何歳まで受給した場合に総額がどうなるかなどを確認したうえで判断する必要があります。
パートなどで厚生年金に加入する
60歳前であれば、パートなどで厚生年金の加入要件を満たす働き方を選ぶことで、自分自身の老齢厚生年金を増やせます。
ただし、「保険料を何歳で回収できる」といった単純な損得だけで加入の有利・不利を判断するのは適切ではありません。
参考として、厚生年金保険料の本人負担額と将来増える老齢厚生年金だけを比較すると次のようになります。
月額11万円で10年間厚生年金に加入した場合の単純比較(編集部試算)
| 項目 | 金額の目安 |
| 厚生年金保険料の本人負担額 | 月10,065円 |
| 本人負担額の10年間合計 | 約120万8,000円 |
| 増える老齢厚生年金 | 年約7万2,300円(月約6,000円) |
| 本人負担額÷年金増加額 | 約16.7年分 |
参考:日本年金機構「厚生年金保険料額表」/日本年金機構「報酬比例部分」
※標準報酬月額11万円、賞与なし、厚生年金保険料率18.3%を労使折半、2003年4月以降の給付乗率5.481÷1,000として計算した概算です。
この約16.7年という数字は、厚生年金保険料の本人負担額と老齢厚生年金の増加額だけを取り出して単純比較した結果にすぎません。
実際に社会保険へ加入すると、健康保険料に加えて40歳以上では介護保険料が発生する場合があり、税金や勤務先の配偶者手当・家族手当に影響することもあります。その一方で、健康保険や厚生年金には老齢年金以外の保障もあります。
第1号被保険者なら付加年金・国民年金基金も選択できる
夫が自営業者などで妻自身も第1号被保険者にあたる場合は、付加年金や国民年金基金によって公的年金を上乗せできます。
付加年金は、月400円の付加保険料を納めると「200円×付加保険料納付月数」が毎年の老齢基礎年金に加算される制度です。たとえば10年間納めた場合、付加保険料の総額は48,000円で、年24,000円が老齢基礎年金に上乗せされます。
ただし、付加年金を利用できるのは第1号被保険者などであり、第3号被保険者は対象外です。国民年金基金との併用にも制限があります。
iDeCoで公的年金以外の老後資金を準備する
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金そのものを増やす制度ではなく、自分で掛金を拠出・運用して老後資金を準備する私的年金制度です。
第3号被保険者の掛金上限は月23,000円で、運用益が非課税となるうえ、掛金は所得控除の対象になります。
もっとも、収入がなく所得税・住民税を負担していない専業主婦の場合、掛金を所得から控除しても税負担を軽減する効果は基本的に生じません。
また、原則として60歳まで資産を引き出せず、選んだ運用商品によっては元本割れする可能性があります。家計の余裕や資金が必要となる時期を確認したうえで、利用を検討することが大切です。
参考:iDeCo公式サイト「iDeCoへの加入を検討されている方」
NISAや個人年金保険で老後資金を補う
公的年金以外の備えとしては、NISAや個人年金保険もあります。
NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。iDeCoと違って60歳までの引き出し制限がなく自由度が高い一方、商品によっては元本割れもあり得ます。
個人年金保険は、要件を満たせば保険料が個人年金保険料控除の対象になります。ただし、収入がなく税金を納めていない専業主婦には控除の恩恵がなく、途中解約すると受け取る返戻金が払込保険料を下回りがちな点も見逃せません。
どちらを選ぶにしても、先に必要な老後資金と公的年金の差額を把握し、「いつ・いくら必要か」から逆算して準備方法を決めることが大切です。
参考:金融庁「NISAを知る」/国税庁「No.1140 生命保険料控除」
年金が少ないときの補完制度と手続きの注意点

年金額を確認するときは、受け取れる給付や必要な手続きについても知っておくことが大切です。
年金生活者支援給付金:基準額は月5,620円で所得・納付期間により実額は変わる
年金生活者支援給付金は、公的年金を含む所得が一定基準以下の受給者に、年金へ上乗せして支給される制度です。2026年8月時点の給付基準額は月5,620円ですが、これは満額の目安で、誰もがこの額を受け取れるわけではありません。
老齢年金分の主な要件は次の3つです。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給している
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等収入とその他の所得の合計が一定額以下
3つ目の所得基準は、昭和31年4月2日以降生まれなら809,000円以下です。これを超えても909,000円以下なら、額を調整した「補足的老齢年金生活者支援給付金」に切り替わります。
支給額そのものも「5,620円×保険料納付済月数÷480月」で計算されるため、納付期間が短いほど少なくなります。基礎年金だけの専業主婦は候補になりやすいものの、世帯全員の課税状況まで見て初めて対象かどうかが決まる点に気をつけてください。
夫の退職・65歳到達時は第1号被保険者への切替が必要になる場合がある
妻が60歳未満のうちに夫が退職して厚生年金を脱退すると、第3号被保険者だった妻も資格を失うため、原則として第1号被保険者への切替手続きが必要です。
また、厚生年金に加入して働き続けている夫であっても、65歳になって老齢基礎年金の受給資格を満たすと国民年金上の第2号被保険者ではなくなります。この場合も、60歳未満の妻は第3号被保険者から第1号被保険者への切替が必要になる場合があります。
手続きをせず未納期間が生じると、将来の老齢基礎年金額だけでなく、障害基礎年金や遺族基礎年金の受給要件にまで影響しかねません。夫の退職や65歳到達は、自分自身の年金区分を確認するタイミングとして覚えておきましょう。
ねんきんネット・ねんきん定期便で自分の見込額を確認する
専業主婦が将来受け取れる年金額は、他人の平均額を見るよりも自分の加入記録から確認する方が確実です。
ねんきん定期便ではこれまでの加入実績を確認でき、ねんきんネットでは年金記録に加えて、条件を変えながら将来の年金見込額を試算できます。
特に確認したいのは、次のような項目です。
- 第3号被保険者として正しく記録されている期間
- 独身時代などの厚生年金加入期間
- 未納期間
- 保険料免除期間
- 納付猶予・学生納付特例期間
結婚・退職・扶養の変更などが多かった人は、加入記録に漏れがないかも併せて確認しておきましょう。
専業主婦の年金だけで老後の生活はできる?単身・夫婦で分けて考える

老後の生活費を考えるうえで重要なのは、「妻自身の年金」と「夫婦世帯の年金」を混同しないことです。
総務省の家計調査と2026年8月時点の年金額を並べると、次のようになります。
| 指標 | 月額 |
| 65歳以上の単身無職世帯の消費支出 | 14万8,445円 |
| 65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出 | 26万3,979円 |
| 老齢基礎年金の満額(1人分・2026年8月時点) | 7万608円 |
| 標準的なモデル年金(夫婦2人分・2026年8月時点) | 23万7,279円 |
参考:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」/日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
※家計調査は2025年の平均値、年金額は2026年8月時点の額です。また、モデル年金は実際の平均受給額ではありません。
たとえば離婚や死別によって単身になった場合には、単身無職世帯の支出額が生活費を考える一つの参考になるでしょう。
一方、夫婦で老後を迎えるなら、妻自身の老齢基礎年金だけを見るのではなく、夫の老齢基礎年金や老齢厚生年金を含めた世帯全体の年金収入と、夫婦世帯の支出を比較する必要があります。
住居費や医療費、生活水準は世帯ごとに大きく異なります。平均額だけで不足額を決めず、自分の家計に置き換えて確認しましょう。
専業主婦の年金に関するよくある質問

ここでは、専業主婦の年金についてよくある質問に回答します。
Q.専業主婦の年金保険料は誰が払っているのですか?
第3号被保険者本人が国民年金保険料を個別に納付する必要はありません。
第3号被保険者の基礎年金に必要な費用は、第2号被保険者が加入する厚生年金制度全体で負担する仕組みです。夫の厚生年金保険料が、妻を扶養していることだけを理由に高くなるわけでもありません。
こうした負担の仕組みをめぐっては公平性などの観点からさまざまな議論がありますが、2026年8月時点では第3号被保険者制度が続いています。
Q.専業主婦でも厚生年金をもらえますか?
独身時代や結婚後などに自分自身が厚生年金へ加入していた期間があれば、その加入記録に応じた老齢厚生年金を受け取れます。
厚生年金の加入期間が短くても、老齢基礎年金などと合わせて老齢年金の受給資格期間を満たしていれば、加入期間と報酬に応じた老齢厚生年金が計算される仕組みです。「現在専業主婦だから老齢厚生年金を受け取れない」というわけではありません。
Q.専業主婦の年金は60歳から受け取れますか?
老齢基礎年金は原則65歳からですが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰上げ受給を請求できます。
ただし、減額率は生年月日によって異なります。昭和37年4月2日以降生まれなら1カ月繰り上げるごとに0.4%減額され、60歳から受け取ると最大24%の減額です。昭和37年4月1日以前生まれの場合は1カ月につき0.5%減額され、60歳から受け取ると最大30%減額されます。
Q.専業主婦の平均年金額はいくらですか?
厚生労働省の公表資料に、専業主婦だけを抽出した平均年金額は示されていません。
女性の国民年金受給権者の平均老齢年金月額として57,582円という数値はあるものの、これは専業主婦限定の平均ではありません。また、現在の受給者には1986年の第3号被保険者制度開始以前の加入歴を持つ人も含まれるため、現在の平均額を現役世代の将来の受給額として使うことも適切とはいえません。
将来いくら受け取れるかを知りたい場合は、老齢基礎年金の満額と自分の加入記録を確認し、ねんきんネットで見込額を試算しましょう。
まとめ:専業主婦の年金額は平均ではなく自分の加入記録から確認しよう

専業主婦が受け取る年金額は一律ではありません。20歳から60歳までの40年間がすべて保険料納付済期間や第3号被保険者期間などとして反映される場合、2026年8月時点の老齢基礎年金は月70,608円が満額です。独身時代などに厚生年金へ加入していれば、その加入記録に応じて老齢厚生年金も加わります。
一方、厚生労働省は専業主婦だけを抽出した平均受給額を公表していません。女性の国民年金平均額をそのまま「専業主婦の平均」と捉えず、ねんきんネットなどで自分自身の加入記録と将来の見込額を確認することが大切です。
また、離婚・死別や夫の退職などによって年金の扱いは変わります。公的年金でまかなえる金額を確認したうえで、必要に応じて働き方や老後資金の準備方法を検討しましょう。




