上皮内新生物(上皮内がん)とは?悪性新生物との違いやがん保険での扱いを解説

上皮内新生物(上皮内がん)とは?悪性新生物との違いやがん保険での扱いを解説

「上皮内新生物は普通のがんとは何が違うのだろう」「上皮内新生物もがん保険でカバーした方がいいの?」と気になっている人もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、上皮内新生物とはどのような状態なのか、悪性新生物やポリープとの違い、どのくらい見つかっているのか、治療や費用、がん保険での扱いまでわかりやすく解説します。

この記事の内容をまとめると

  • 上皮内新生物とは、がん細胞が表面の細胞の層にとどまり、その下の組織まで広がっていない状態です
  • 2023年の全国がん登録では、悪性新生物と上皮内新生物を合わせた登録件数のうち、上皮内新生物は約10.9%でした
  • 治療方法や費用は、発生した部位や治療内容によって異なります
  • がん保険では、約款所定の悪性新生物と同額で保障される場合、給付額や条件が異なる場合、対象外となる場合があります

本記事は、上皮内新生物、治療、公的医療保険制度および民間保険に関する一般的な情報を提供するもので、特定の治療方法または保険商品への加入・見直しを推奨するものではありません。掲載内容は2026年9月時点の情報に基づいており、制度や診療報酬等は今後変更される場合があります。診断・治療については医師等の医療従事者に、保険金・給付金の支払可否については契約概要、ご契約のしおり・約款、保険証券等を確認のうえ、保険会社にお問い合わせください。

上皮内新生物とは

上皮内新生物(上皮内がん)とは?悪性新生物との違いやがん保険での扱いを解説

まずは、上皮内新生物がどのような状態なのかを確認しましょう。

上皮内新生物の定義

上皮内新生物(上皮内がん)とは?悪性新生物との違いやがん保険での扱いを解説

上皮内新生物とは、がん細胞が「上皮」と呼ばれる部分にとどまり、その下の組織まで入り込んでいない状態です。「上皮内がん」とも呼ばれます。

上皮とは、皮膚の表面や胃・腸などの内側を覆っている細胞の層です。上皮とその下の組織との境目には「基底膜」と呼ばれる薄い膜があり、がん細胞がこの境目を越えて周囲の組織へ入り込むことを「浸潤」といいます。

上皮内新生物は、がん細胞が血管やリンパ管のある組織まで達していないため、転移していることはほとんどありません。ただし、治療が必要ないわけではなく、治療方法や治療後の経過は病変ができた場所や状態によって異なります。

「上皮内がん」・「上皮内癌」との違い

「上皮内新生物」「上皮内がん」「上皮内癌」は、いずれもがん細胞が上皮内にとどまっている病変について使われる言葉です。「癌」と「がん」は表記の違いであり、一般向けの医療情報では読みやすい「がん」がよく使われます。

一方で、これらの言葉が指す範囲は、病変ができた部位や医学上の分類によって異なることがあります。保険の約款では、病気の定義を国際的な疾病分類(ICD-10)などにもとづいて定めていることが多く、上皮内新生物は『D00〜D09』などに分類されます。たとえば大腸の粘膜内がんは、医療機関で『がん』と説明されても、約款上は上皮内新生物として扱われることがあります。

診断書に「上皮内」「非浸潤」などの言葉があったとしても、保険金や給付金を受け取れるかどうかは、契約している商品の約款に書かれた病気の定義や支払条件をもとに判断されます。

上皮内新生物と浸潤がんの違い

上皮内新生物と浸潤がんの大きな違いは、がん細胞が上皮の外まで入り込んでいるかどうかです。ここでは、上皮から発生するがんについて比較します。

項目上皮内新生物浸潤がん(上皮由来のがん)
がん細胞の広がり上皮の中にとどまっている上皮を越えて周囲の組織まで広がっている
転移転移していることはほとんどない血管やリンパ管などを通じて転移することがある
病期0期として扱われるがん種があるがんの種類や広がりに応じてⅠ~Ⅳ期などに分けられる

参考:国立がん研究センター がん情報サービス「がんという病気について」/国立がん研究センター がん統計「上皮内がん」

国立がん研究センターでは、上皮内がんは基底膜を越えて浸潤していないため、統計上は通常「がん(悪性新生物)」には含めないと説明しています。医学上の分類や保険約款では扱いが異なるため、「上皮内新生物=一般的ながんとまったく同じ」と考えるのは適切ではありません。

ただし、上皮内新生物であれば「簡単な治療だけで済む」「切除すれば再発しない」とは限りません。

ポリープとの違い

ポリープは、粘膜の表面が盛り上がった病変の総称で、良性を意味する言葉ではありません。 たとえば大腸ポリープには、がんと関係のないもののほか、良性腫瘍である腺腫や、がんが含まれることもあります。

外見だけでは確定できない場合があるため、切除した組織を顕微鏡で詳しく調べる検査によって最終的な診断を行います。

ポリープを切除したという事実だけでは、約款所定の悪性新生物や上皮内新生物の診断確定を支払条件とする診断給付金の対象にはなりません。病理診断と契約上の支払条件の両方を確認する必要があります。

なお、医療保険では、所定のポリープ切除術が手術給付金の対象になることがあります。

参考:日本消化器病学会「大腸ポリープ」

がん保険で上皮内新生物はどう扱われる?

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がん保険では、上皮内新生物がどこまで保障されるかが商品や契約内容によって異なります。

保障内容は商品や契約によって異なる

上皮内新生物の取扱いは、商品だけでなく、診断給付金、治療給付金、入院給付金、保険料払込免除など、保障の種類によって異なる場合があります。主な取扱いの例は次のとおりです。

保障パターン確認する内容
約款所定の悪性新生物と同額で保障される上皮内新生物でも同じ金額の給付金を受け取れるか
給付額や条件が異なる給付金額、支払回数などに違いがあるか
保障対象外上皮内新生物が給付金の対象に含まれているか

参考:生命保険文化センター「がん保険」

生命保険文化センターでも、がん保険の給付内容は商品によって異なり、がんの種類によって一部が支払対象にならない場合があるため、契約内容を確認するよう案内しています。

がん保険には「待ち期間」がある場合がある

がん保険やがんに関する特約には、所定の起算日から90日程度、がん保障が開始されない「待ち期間」(商品・資料によっては「免責期間」「待機期間」などと呼ばれます)を設ける商品があります。待ち期間の有無・長さ・起算日や、保障開始前にがんと診断確定された場合の契約・特約の取扱いは、商品・契約内容によって異なります。

また、がん診断給付金の対象外でも、すでに保障が始まっている医療保険では、所定の入院や手術が給付対象になることがあります。ただし、責任開始期より前に発病していた病気の扱いや、対象となる入院・手術の範囲は契約内容によって異なるため、約款を確認しましょう。

がん保険を確認するときのポイント

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上皮内新生物への備えを考える場合に、主に確認したいのは次の4点です。

  • 上皮内新生物が保障対象になっているか
  • 約款所定の悪性新生物と同じ金額を受け取れるか
  • 何回まで給付金を受け取れるか、2回目以降の条件はどうなっているか
  • 入院・手術・通院・薬物療法なども保障されるか

同じ保険会社であっても、商品や加入した時期、付けている特約によって保障内容が異なることがあります。加入中の保険がある場合は、保険証券や契約内容のお知らせなどを確認し、上皮内新生物がどのように取り扱われるのか確認しておきましょう。

すでに加入している場合は、パンフレットだけでなく、保険証券や約款を確認することが大切です。

ただし、保障を増やすほど保険料の負担も大きくなります。公的医療保険や貯蓄、現在加入している保険なども含めて、必要な保障を考えることが大切です。

上皮内新生物はどのくらい見つかっている?

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厚生労働省が公表する全国がん登録から、上皮内新生物がどのくらい登録されているのか確認してみましょう。

悪性新生物と上皮内新生物の登録件数のうち約1割

2026年9月時点で公表されている最新データである2023年の登録状況を見ると、悪性新生物と上皮内新生物を合わせた件数のうち、上皮内新生物は約10.9%を占めています。

区分悪性新生物+上皮内新生物うち上皮内新生物上皮内新生物の割合
全体1,114,642件121,173件約10.9%
男性611,765件55,706件約9.1%
女性502,872件65,466件約13.0%

参考:厚生労働省「2023年 全国がん登録 罹患数・率 報告」

※上皮内新生物の件数は、『悪性新生物+上皮内新生物』から『悪性新生物』を差し引いて編集部が算出しています。

※割合は「上皮内新生物÷悪性新生物と上皮内新生物の合計」で編集部が算出し、小数第2位を四捨五入しています。登録件数に占める割合であり、個人が上皮内新生物になる確率を示すものではありません。

※※全体には、性別不詳等の登録が含まれるため、男性と女性の合計と一致しない場合があります。

部位別では子宮頸部の割合が高い

同じ方法で部位別に計算すると、次のとおりです。

部位悪性新生物+上皮内新生物うち上皮内新生物上皮内新生物の割合
子宮頸部33,585件23,128件約68.9%
膀胱45,508件21,538件約47.3%
結腸133,721件31,285件約23.4%
皮膚34,440件7,087件約20.6%
直腸※63,345件11,742件約18.5%
乳房116,619件13,195件約11.3%
食道28,528件2,639件約9.3%
肺127,193件3,204件約2.5%

参考:厚生労働省「2023年 全国が 罹患数・率 報告」

※直腸は、直腸につながる一部の部位を含めた集計です。

特に子宮頸部では、上皮内新生物として登録される割合が高くなっています。がん保険や女性向けの保障を確認するときには、悪性新生物だけでなく、上皮内新生物がどのように保障されるかも確認しておくとよいでしょう。

なお、これらは登録件数に占める割合であり、個人が上皮内新生物になる可能性や治療内容を示すものではありません。

上皮内新生物の治療と費用

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上皮内新生物の治療方法や費用は、病変ができた場所や治療内容によって異なります。

治療方法と費用は病変ができた場所によって異なる

子宮頸部では、高度な前がん病変に対して子宮頸部の一部を円すい状に切り取る手術などが行われます。乳房では、病変のある部分などを取り除く手術が行われます。

一方、膀胱の上皮内がんでは、内視鏡を使った手術だけで治療が完結するとは限りません。 内視鏡を使った手術(TURBT)などで診断・評価した後、BCGという薬を膀胱内に注入する治療が行われることがあります。実際の治療方法は、病変の種類や広がり、患者の状態によって異なります。

代表的な手術について、手術料のみを3割負担で計算した目安は次のとおりです。

部位・手術の例手術料(10割)3割負担の目安
子宮頸部の一部を切除する手術33,300円約10,000円
乳房の一部を切除する手術※1282,100円約84,600円
膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術。診断・初期治療の例)※2104,000~135,300円約31,200~40,600円

参考:厚生労働省「令和8年度 医科診療報酬点数表」/国立がん研究センター がん情報サービス「膀胱がん 治療」

※1 わきの下のリンパ節を取り除かない乳房部分切除術の場合です。
※2 膀胱の上皮内がんでは、TURBTの後にBCGを膀胱内へ注入する治療が行われるため、表の金額だけが治療費全体ではありません。
※実際の治療費には診察・検査・麻酔・薬・入院などの費用が加わります。また、患者の年齢、所得、自己負担割合、高額療養費制度の適用状況等によって、最終的な自己負担額は異なります。

治療費には高額療養費制度を利用できる場合がある

公的医療保険が適用される診療では、1ヵ月の自己負担額が年齢や所得に応じた上限額を超えた場合、超えた分が高額療養費として支給されます。

2026年8月診療分からは月額の自己負担上限が見直され、8月から翌年7月までの「年間上限」も新たに設けられました。 長期に治療を受ける場合は、月ごとの上限だけでなく年間上限が適用されることがあります。

なお、差額ベッド代、入院時の食事代、保険適用外の費用、通院の交通費などは高額療養費制度の対象には含まれません。

参考:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

自己負担額や年間上限、申請方法については、「高額療養費制度とは?自己負担額や年間上限、申請方法をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。

上皮内新生物に関するよくある質問

上皮内新生物(上皮内がん)とは?悪性新生物との違いやがん保険での扱いを解説

上皮内新生物はがんですか?ステージでいうと何期ですか?

上皮内新生物は「上皮内がん」とも呼ばれますが、基底膜を越えていないため、通常は浸潤性の悪性新生物と区別されます。 医学上の分類、全国がん登録、保険約款では扱いが異なるため、一律に「一般的ながんと同じ」とはいえません。

乳房の非浸潤がんは0期、膀胱の上皮内がんに該当するTisは0is期に分類されます。ただし、すべての部位の上皮内新生物が一律に0期になるわけではありません。

加入中のがん保険から給付金は受け取れますか?

上皮内新生物が給付対象になるかどうかは、加入しているがん保険によって異なります。

約款所定の悪性新生物と同じ金額を受け取れる契約もあれば、金額や回数などの条件が異なる契約、上皮内新生物が対象外となる契約もあります。保険証券や約款を確認し、判断が難しい場合は保険会社へ問い合わせましょう。

ポリープを切除した場合、がん保険の対象になりますか?

ポリープを切除しただけでは、がんと診断されたことを理由とする給付金の対象になるとは限りません。

切除した組織を詳しく調べた結果、契約しているがん保険で保障される約款所定の悪性新生物や上皮内新生物と診断確定され、支払条件を満たした場合には給付金の対象となることがあります。

また、医療保険では、所定のポリープ切除術が手術給付金の対象になることがあります。

上皮内新生物は女性に多いのですか?

2023年の全国がん登録では、悪性新生物と上皮内新生物を合わせた登録件数に占める上皮内新生物の割合は、男性が約9.1%、女性が約13.0%でした。

ただし、この数値は男女それぞれの登録件数に占める上皮内新生物の割合です。女性の方が上皮内新生物を発症しやすいことを示すものではありません。

上皮内新生物と診断された後でも、がん保険に入れますか?

上皮内新生物の診断歴があっても、商品・申込時期・現在の健康状態等によっては申し込める場合があります。ただし、申込みができることと、契約が引き受けられることは同じではありません。加入可否や条件は、告知内容等に基づいて保険会社が個別に判断します。

申込みでは、告知書や申込画面で質問された事項に正確に回答し、不明点は保険会社の窓口へ確認しましょう。

まとめ

上皮内新生物(上皮内がん)とは?悪性新生物との違いやがん保険での扱いを解説

上皮内新生物とは、がん細胞が臓器などの表面を覆う細胞の層にとどまり、その下の組織まで入り込んでいない状態で、「上皮内がん」とも呼ばれます。

2023年の全国がん登録では、悪性新生物と上皮内新生物を合わせた登録件数の約10.9%を占め、子宮頸部では約68.9%と部位によって割合が大きく異なります。

がん保険での上皮内新生物の扱いは商品や契約によって異なります。約款所定の悪性新生物と同額で保障されるか、給付額や支払条件が異なるか、対象外となるかに加え、入院・手術などの保障や待ち期間も確認しておきましょう。