「傷病手当金がもらえないケースを知りたい」「自分は支給対象になるのか不安」と感じている人は多いのではないでしょうか。
傷病手当金は病気やケガで働けないときの生活を支える制度です。ただし、加入している健康保険の種類や休職中の給与、退職時の状況などによっては支給されない場合があります。
そこで本記事では、傷病手当金がもらえないケースや実際はもらえるケース、もらえない場合の対処法について解説していきます。
この記事の内容をまとめると
- 傷病手当金は業務外の病気やケガで働けないときの給付です
- 労災対象・待期未完成・給与支給中などはもらえない場合があります
- パートや入社1年未満でも健康保険の被保険者なら対象になり得ます
- 不支給時は健康保険組合や勤務先に理由を確認することが大切です
この記事の内容
傷病手当金とは?もらえないケースを確認する前に基本を理解しよう

ここでは、傷病手当金の基本的な仕組みや支給条件、金額、支給期間について解説していきます。
傷病手当金は病気やケガで働けないときの生活保障
傷病手当金は健康保険の被保険者が病気やケガで会社を休み、事業主から十分な報酬を受けられない場合に支給される制度です。
対象は原則として勤務先の健康保険に加入している本人です。国民健康保険は健康保険とは別の制度のため、自営業者やフリーランスなどの国民健康保険加入者は原則として傷病手当金の対象外になります。
ただし、自治体や国民健康保険組合によって扱いが異なる場合もあるため、加入先に確認するとよいでしょう。
傷病手当金をもらうための支給条件・金額・期間
傷病手当金を受け取るには、業務外の病気やケガで療養していること、療養のために仕事に就けない状態であること、連続3日間の待期期間を含めて4日以上仕事を休んでいること、休業期間中に給与が支払われていないことなどが必要です。

参考:全国健康保険協会「傷病手当金|給付と手続き」厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」
支給額は、原則として「支給開始日前12か月間の標準報酬月額の平均額÷30日×2/3」で計算されます。たとえば標準報酬月額の平均が30万円の場合、1日あたりの支給額は「30万円÷30日×2/3」で約6,667円です。
また、支給期間は同じ病気やケガについて通算1年6か月が上限です。2022年1月1日からは支給期間の考え方が見直され、途中で復職した期間など支給されない期間は通算期間に含まれない扱いとなりました。
傷病手当金・傷病手当・休業手当の違い
傷病手当金と似た制度に、雇用保険の傷病手当や労働基準法上の休業手当があります。名前は似ていますが、対象者や支給される場面は異なります。
| 種類 | 主な対象 | どんなときの給付か |
| 傷病手当金 | 健康保険の被保険者 | 業務外の病気・ケガで働けないとき |
| 傷病手当 | 雇用保険の受給資格者 | 求職中に病気・ケガで働けないとき |
| 休業手当 | 会社に雇用されている労働者 | 会社都合で休業したとき |
参考:全国健康保険協会「傷病手当金|給付と手続き」 ハローワークインターネットサービス「よくあるご質問(雇用保険について)」 厚生労働省 大分労働局「休業手当(平均賃金の60%以上)の計算方法」
傷病手当金は健康保険の制度です。一方、雇用保険の傷病手当は、基本手当の受給資格者が求職中に病気やケガで働けない場合に関係します。休業手当は、使用者の責めに帰すべき事由で休業した場合に関係する制度です。
傷病手当金がもらえないケース

ここでは、傷病手当金がもらえないケースとして代表的な7つのパターンを解説していきます。
| ケース | 傷病手当金がもらえないケース |
| 1 | 業務中や通勤が原因の病気・ケガ |
| 2 | 医師から労務不能と認められていない |
| 3 | 連続3日間の待期期間を満たしていない |
| 4 | 傷病手当金以上の給与や有給分の賃金が支払われている |
| 5 | 同じ病気やケガで支給期間の上限を超えている |
| 6 | 退職後の継続給付の条件を満たしていない |
| 7 | 出産手当金や障害年金など他の給付との調整対象になっている |
参考:全国健康保険協会「傷病手当金|給付と手続き」 厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」
ケース①:業務中や通勤が原因の病気・ケガで労災保険の対象になる
業務中や通勤が原因で病気・ケガをした場合は、健康保険の傷病手当金ではなく労災保険の対象になる可能性があります。
傷病手当金と労災保険のどちらに該当するか迷う場合は、勤務先や労働基準監督署に相談するとよいでしょう。
ケース②:医師から労務不能と認められていない
傷病手当金は、病名があるだけでは支給されません。療養のために仕事へ就けない状態であることが必要です。この状態を労務不能といいます。労務不能かどうかは、医師の意見や本人の仕事内容などをもとに判断されます。
診断名があっても通常業務が可能と判断される場合は、傷病手当金がもらえないケースがあります。申請の際は、仕事内容や働けない理由を医師に具体的に伝えることが大切です。
ケース③:連続3日間の待期期間を満たしていない
傷病手当金は休み始めてすぐに支給される制度ではありません。療養のために仕事を休み始めた日から、連続3日間の待期期間を満たす必要があります。

参考:全国健康保険協会「傷病手当金|給付と手続き」/厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」
待期期間は「連続して3日休んだか」で判断されます。たとえば月曜に休み、火曜に出勤し、水曜から再び休んだ場合は連続3日間とはみなされません。一方で、有給休暇や土日祝日などの公休日も待期期間に含まれます。
ケース④:傷病手当金以上の給与や有給分の賃金が支払われている
休職中に給与が支払われている場合、傷病手当金がもらえないことがあります。

たとえば有給休暇を使って通常通りの賃金が支払われている期間は、支給対象外になる場合があります。ただし、給与の額が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます。
ケース⑤:同じ病気やケガで支給期間の上限を超えている
傷病手当金の支給期間は、同じ病気やケガについて通算1年6か月が上限です。
2022年1月からは、実際に傷病手当金が支給された期間を通算する仕組みになりました。途中で復職した期間がある場合は、その期間を除いて残りの支給期間を確認します。すでに通算1年6か月分を受け取っている場合は、同じ傷病では原則としてそれ以上支給されません。
ケース⑥:退職後の継続給付の条件を満たしていない
退職後も傷病手当金を受け取れる場合があります。ただし、資格喪失後の継続給付を受けるには、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、資格喪失日の前日である退職日に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることが必要です。
特に、退職日に出勤扱いになると「退職日時点で仕事に就けない状態」と判断されず、継続給付に影響する可能性があります。また、任意継続被保険者の期間中に発生した病気・ケガは傷病手当金の対象外です。
退職前に条件を満たしているか、勤務先や加入先の健康保険に確認しておくとよいでしょう。
ケース⑦:出産手当金や障害年金など他の給付との調整対象になっている
傷病手当金は、他の給付と重なる場合に支給額が調整されることがあります。
| 調整対象になりやすい給付 | 注意点 |
| 出産手当金 | 同じ期間に受ける場合は調整されることがある |
| 障害厚生年金・障害手当金 | 同じ傷病で受ける場合は調整されることがある |
| 老齢厚生年金など | 退職後の継続給付で調整されることがある |
参考:全国健康保険協会「傷病手当金|給付と手続き」/全国健康保険協会「傷病手当金をご返金いただく場合があります(年金との調整について)」
年金をさかのぼって受け取った場合は、過払いとなった傷病手当金の返金が必要になるケースもあります。
傷病手当金が実はもらえるケース

ここでは、傷病手当金がもらえないと誤解されやすいものの、条件を満たせば支給対象になり得るケースを解説していきます。
パートやアルバイトでも勤務先の健康保険に加入していればもらえる可能性がある
パートやアルバイトでも、勤務先の健康保険に加入している被保険者であれば、傷病手当金をもらえる可能性があります。
短時間労働者の場合、主に以下のような条件を満たすと社会保険の加入対象になります 。
| 主な要件 | 内容 |
| 勤務先の規模 | 厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業など |
| 労働時間 | 週の所定労働時間が20時間以上 |
| 賃金 | 所定内賃金が月額8.8万円以上 |
| 学生区分 | 原則として学生ではない |
| 雇用期間 | 2か月を超えて雇用される見込みがある |
参考:厚生労働省「社会保険加入の要件」/日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
傷病手当金の対象は正社員かどうかではなく、健康保険の被保険者かどうかで判断されます。扶養内で働いている人や国民健康保険の加入者は、原則として傷病手当金の対象外です。
入社1年未満でも在職中ならもらえる可能性がある
入社1年未満でも、在職中に勤務先の健康保険へ加入していれば傷病手当金をもらえる可能性があります。
「1年以上の被保険者期間」が問題になるのは、主に退職後の継続給付です。在職中の申請では、業務外の病気やケガ、労務不能、待期期間、給与の有無などを満たすかが重要になります。
ただし、加入期間が12か月に満たない場合は支給額の計算方法が異なります。
うつ病・適応障害・がんでも労務不能と認められればもらえる可能性がある
うつ病、適応障害、がんなどでも、療養のために働けないと認められれば、傷病手当金の対象になる可能性があります。傷病手当金において重要なのは、業務外の病気やケガにより現在の仕事に就けない状態かどうかです。
申請時は医師の証明や勤務先の証明が必要になるので、仕事内容や症状による制限を具体的に伝えておくとよいでしょう。
交通事故でも業務外のケガならもらえる可能性がある
交通事故によるケガでも、業務中や通勤中ではない場合は傷病手当金をもらえる可能性があります。
たとえば休日の外出中の事故で療養が必要になり、働けない状態になった場合は業務外のケガとして判断されることがあります。また、第三者の行為による負傷で健康保険を使う場合は、第三者行為による傷病届の提出が必要です 。
有給休暇後や退職後でも条件を満たせばもらえる可能性がある
有給休暇を使ったあとでも、給与が支払われない休職期間に入れば傷病手当金をもらえる可能性があります。
また退職後も資格喪失後の継続給付の条件を満たしていれば、残りの期間について受け取れる場合があります。
傷病手当金をもらわない方がいいケースはある?

ここでは、傷病手当金をもらわない方がいいのか迷っている人に向けて、判断時に確認したいポイントを解説していきます。
受給条件を満たすなら基本的に申請を検討した方がよい
傷病手当金は、受給条件を満たすなら基本的には申請を検討した方がよい制度です。ただし、有給休暇を使う場合との収入差、扶養認定、失業給付、会社独自の休職手当との関係は事前に確認しておきましょう。
転職・扶養・失業給付との関係は事前に確認しておく
傷病手当金を受け取る場合は、転職活動や扶養、失業給付との関係を事前に確認しておきましょう。
雇用保険の基本手当は、働く意思と能力があるにもかかわらず職業に就けない状態の人を対象とする給付です。病気やケガですぐに働けない場合は、受給期間の延長を検討することがあります。
また、健康保険の扶養認定では傷病手当金も収入に含まれます。家族の扶養に入る予定がある人は注意が必要です。
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」/日本年金機構「被扶養者に異動があったときの手続き」
傷病手当金がもらえない場合はどうする?すべきことを解説

ここでは、傷病手当金がもらえないときに確認したい対応や相談先について解説していきます。
傷病手当金の申請方法・申請タイミングを確認する
傷病手当金を受け取るには、傷病手当金支給申請書を提出する必要があります。申請書には本人が記入する欄のほか、事業主の証明や医師の意見を記入する欄があります。
基本的な流れは以下の通りです。
| 手順 | 内容 |
| 1 | 本人が申請書を記入する |
| 2 | 会社に事業主証明を依頼する |
| 3 | 医師に労務不能の意見を記入してもらう |
| 4 | 健康保険組合や協会けんぽへ提出する |
| 5 | 審査後に支給・不支給が決まる |
申請は、給与の締め日以降など給与の支払い状況が確定してから行うと、会社の証明を受けやすくなります。不備があると支給が遅れるため、申請期間と医師の証明期間がずれていないか確認することが大切です。
不支給の連絡・通知が届いたら理由を健康保険組合や協会けんぽに確認する
傷病手当金が不支給になった場合はまず理由を確認しましょう。原因がわからないままでは、再申請や他制度の検討がしにくくなります。
不支給になった場合は、申請期間、医師の証明期間、給与の支払い状況などを確認しましょう。また、申請書の記入漏れや事業主証明の不足があると、支給まで時間がかかる場合があります。
会社の人事・労務担当者に給与や休職制度を相談する
傷病手当金がもらえない場合は、会社の人事・労務担当者にも相談しましょう。
支給可否には、休職中の給与、有給休暇、会社独自の休職制度が関係します。給与が一部支払われている場合は、傷病手当金との差額が支給されることがあります。
医師の証明や労災保険・障害年金など他制度の利用を確認する
傷病手当金がもらえない場合でも、他の制度を利用できる可能性があります。
| 状況 | 確認したい制度 |
| 業務中・通勤中の病気やケガ | 労災保険 |
| 障害が残る、長期療養が必要 | 障害年金 |
| すぐに働けず失業給付を受けにくい | 雇用保険の受給期間延長 |
参考:厚生労働省「労働災害が発生したとき」/全国健康保険協会「傷病手当金をご返金いただく場合があります(年金との調整について)」/ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
労働災害で休業した場合は、労災保険の休業補償給付などを確認しましょう。また、障害厚生年金などを受ける場合は、傷病手当金との調整が必要になることがあります。
傷病手当金がもらえないケースに関するよくある質問

ここでは、傷病手当金がもらえないケースについて、よくある質問に回答していきます。
同じ病気や2回目の休職でも傷病手当金はもらえますか?
同じ病気やケガでも、支給期間の上限である通算1年6か月に達していなければ、2回目の休職で傷病手当金をもらえる可能性があります。
途中で復職した期間は、支給期間に含まれません。
傷病手当金の支給が遅くて生活できないときはどうすればよいですか?
傷病手当金の支給が遅い場合は、加入している健康保険組合や協会けんぽに進捗を確認しましょう。申請書の記入漏れ、医師の証明期間と申請期間のずれ、事業主証明の不足などがあると、支給まで時間がかかる場合があります。
生活が厳しい場合は、勤務先や自治体の相談窓口にも早めに相談するとよいでしょう。
風邪やインフルエンザでも傷病手当金はもらえますか?
風邪やインフルエンザでも、業務外の病気で仕事に就けず、待期期間や給与の条件を満たす場合は傷病手当金の対象になり得ます。
ただし、短期間の欠勤で連続3日間の待期期間を満たさない場合や、有給休暇で給与が支払われる場合は支給されないことがあります。
美容整形で仕事を休んだ場合も傷病手当金はもらえますか?
美容目的の美容整形で仕事を休んだ場合、傷病手当金は原則としてもらえません。傷病手当金は、病気やケガの療養のために仕事に就けない場合の給付であり、美容目的の施術は通常の病気やケガとは扱いが異なるためです。
ただし、治療目的の手術や施術後の合併症などで、医師から労務不能と認められる場合は判断が分かれる可能性があります。美容目的か治療目的かで扱いが変わるため、迷う場合は加入先の健康保険組合や協会けんぽに確認するとよいでしょう。
傷病手当金がもらえないケースを確認し、必要な対応を進めよう

傷病手当金は、業務外の病気やケガで働けず給与を十分に受け取れないときの生活保障です。一方で、労災保険の対象になる場合や、医師から労務不能と認められない場合、待期期間を満たしていない場合などは、傷病手当金がもらえないケースがあります。
もらえないと判断された場合でも、理由を確認すれば再申請や他制度の利用につながる可能性があります。自己判断で諦めず、勤務先や加入している健康保険組合、協会けんぽに確認しながら必要な対応を進めましょう。
長期療養時の生活費や医療費に不安がある場合は、公的制度でカバーされる範囲を確認したうえで、就業不能保険などの民間保険なども含めて備え方を考えておくとよいでしょう。




